サイジニア誕生の背景

創業者で代表を務める吉井が、文部科学省・日本学術振興会の研究者として、複雑系やロボット工学の研究をしていたころ、インターネットの人気アプリケーションとして、検索エンジンが登場しました。今では、検索エンジンを使えば、ネット上の情報は何でも探すことができると多くの人が考えるようになっています。しかし、検索エンジンにも限界があると感じていました。それは、検索ボックスに入力可能な、知っている言葉でしか探せないことです。私たちがしばしば経験するような、一目惚れや運命的に出くわす体験は検索エンジンからは得られません。

一方で、自然界における進化・自己組織化現象を研究していた吉井は、インターネットのネットワーク構造や成長過程に、自然界で観測される自己組織化パターンと類似する現象が存在することに興味を覚えました。インターネットの構造に普遍法則があるのなら、Web上の行動履歴にも同様のことが当てはまるのではないかと直感したのです。そこに、機械学習やニューラルネットワーク、進化型計算理論などの計算手法を適用すれば、より最適な情報を得られる仕組みが作られるのではないか――、と。

何が「最適か?」の定義は難しいところですが、人は最小のコストで効用を最大化しようと限定合理的に振舞うものと仮定すると、ネット上ではユーザからのクリックをフィードバック情報として利用することができます。これらを束ねると、ユーザがまだ知らない、将来に気に入るはずの情報に先回りして出くわすシステムが実現できると考えました。

現実世界における「けもの道」は、ランダムに歩く人々により、ある二点間をできるだけ短い距離長で結ぶようにつながっています。物理的制約を伴う現実世界では、けもの道の数は有限ですが、ネット上のバーチャル空間ではユーザの数だけ、欲しい情報へたどり着く最短経路を考えることができます。こうして、ネット上の膨大なクリックデータの研究が始まりました。

複雑ネットワーク理論や複雑系の概念は、サイジニアの解析技術の基盤となる理論の一つです。それらは、複雑で膨大なデータを解析して活用する際の普遍原理を提供します。サイジニアが、異なる業種業態、様々なサービス体系においても、基礎技術を共有できるのは、このような普遍的な理論的裏付けがあるからです。

レコメンデーションシステムのプロトタイプは北海道大学の研究室で開発されました。しかし、大学の研究室では理論の検証に限界があります。実際に、膨大なユーザの消費活動に組み込まれなければ本当のユーザの趣味嗜好を理解することはできません。こうして、同研究室の研究メンバーを中心としてサイジニアが設立されました。